アヒルは群れで行動をよくします。今回はそんなアヒルの行動の意味について紹介します。なつかせる方法や習性、不思議なアヒルならではの特徴がわかります。
アヒルの行動の意味
最初に見たものを親
アヒルには刷り込みと言われる習性があります。生まれて始めて見たものを親と認識して、その後をついて回るというものです。
自然界ではこの習性により、親を見分け、その後をついて回ることで安全に育つことができ、また親から生活のために必要な技術を学びます。
しかし家禽であるアヒルは、そもそも雌が抱卵の性質を失っています。
家禽として育てられるときも、人工孵化などによって生まれる場合は、生まれて始めてみるのは、自分と一緒に孵化した雛たちです。
通常ペットショップなどで取り寄せた雛であれば、当然初めて見るのは飼い主ではありません。
すると、飼い主を親として刷り込みさせるのは難しいという事になります。
アヒルは人に慣れるのか?
しかしだからといって、アヒルが飼い主を認識しないのかというと、そうでもありません。
アヒルは一生に渡り、自分の世話をしている人間を認識します。
親と思っているかどうかはわかりませんがそれどころか、世話をしている人だけでなく、一緒に暮らしている家族もちゃんと覚えています。
アヒルは、家の敷地内に家族以外の人が入ってくると騒がしく鳴き出します。
しかしこれが飼い主やその家族であれば、知らん顔します。
この行動は明確ですので、アヒルは飼い主や、一緒の家に生活している人のことはちゃんと覚えていると言うことになります。
但し、自分たちの小屋に近づいてくると、家族であろうと飼い主であろうと鳴きます。
ここは自分の家だ!と主張しているようです。
でも、イヌやネコのように飼い主に関心を寄せるわけではないのです。
アヒルを複数飼いすることは、保温やアヒルの生活の活性化などから見ても有意義です。
でも群れを作る習性のあるアヒルは、複数飼いすると、互いを仲間と認識しますが、飼い主である人間への関心は薄れます。
飼い主であることはちゃんと認識していますが、それ以上の関心はないようです。
イヌやネコのように懐いてもらって、コミュニケーションを楽しみたいと思っている飼い主にとっては、ちょっと肩すかしでしょう。
時々寄ってきたりはしますが、それも、単なる動く物への興味とか、餌が欲しいアピールとか、雄の発情期の攻撃行動とかで、あくまでも行動は仲間と一緒です。
テリトリーを決め、巡回によって常に確認
アヒルは自分たちのテリトリーを決める習性があります。
そこが彼らの生活圏になります。アヒルを朝小屋から出すと、ひとしきり羽ばたいたりしてから、必ずテリトリーの巡回を行います。
群れでそろってテリトリーの境界をぐるりと歩き、それが終わってから、お気に入りに場所に行って休憩します。この巡回は、1日何回か行われます。
決まった時間割で動く
アヒルは毎日ほぼ同じ時間割で動いています。餌を与える時間を一定にしてやれば、この時間割もきちんと一定します。
同じ時間に起き、同じ時間に餌を食べ、その後水浴び、休憩、お昼寝、運動と、成鳥に達したアヒルは毎日同じリズムで生活します。
例えば、庭に放していたとしても、夕方の餌の時間になると自然に小屋に帰ってきます。
1羽飼いの方がなつく?
群れを作る習性のあるアヒルですが、1羽飼いだと群れを作ることができません。
そのせいか、人に関心を持つようになります。イヌやネコのように、人に寄り添うようになります。
群れの中にあるアヒルは、飼い主が名前を呼んでも無視ですが、1羽きりになったアヒルは、名前を呼べば寄ってくるようになります。
アヒルは、例え生まれたときの刷り込みがなくても、状況によって、人に懐くようになります。
このときは、飼い主だけでなく、それ以外の家族などにも、人の側の応対によって懐くことがあります。
アヒルにとって1羽飼いは、あまり望ましいことではないのですが、現在小屋内で隔離して育てる事が必須であるアヒルは、多数飼いが難しくなっています。
また、アヒルをイヌやネコのように人になれさせたいと思っている飼い主ならば、1羽飼の方が希望にかなうかもしれません。
しかし1羽飼いですと、冬場の保温等の問題や、外敵が小屋に侵入した場合には抵抗のすべがなかったりしますので、その分飼い主の負担も増えることになります。
アヒルは群れが大事
アヒルを複数飼いすると、必ず群れを作ります。一緒に育ったアヒルたちは1つの群れを作り、その中で最も発育がよく、大きいアヒル(ほとんどは雄)がリーダーとなって、群れを率います。
餌を食べたり、水浴びをしたりするとき、もし順番を待たないといけないような制限があれば、必ずこのリーダーが最初になります。
この群れは終生変わらず、まとまって行動します。互いに気遣い合う様子は見ていてほほえましいものです。
逆に、後から群れ以外のアヒルを加えても馴染むことがありません。
もし、雛から育つ時に、すぐそばに成鳥が存在すれば、その成鳥をリーダーとした群れが存在する可能性があるかもしれませんが、雛の時期は室内飼育になりますので、雛だけの独立した飼育になり、成鳥と一緒にできるのは中雛以降です。
この時点では既に雛から一緒に育ったアヒル同士で群れができていますので、成鳥や、他の場所で育ったアヒルが、この群れと馴染むことはないでしょう。
違う世代の群れが存在した場合の問題
前の世代のアヒルがまだ残っていて、新しい若いアヒルを複数購入したような場合、この2つの世代の群れがが一緒になる事はありません。
当初、新しいアヒルがまだ若いうちは、前の世代のアヒルの方が強いため、若いアヒルたちはおとなしくしています。
抵抗しても勝てないからです。それでも、前の世代のアヒルと若いアヒルたちが一緒に行動することはまずありません。
同じ世代(群れ)のアヒル同士が固まっています。
しかし時間がたって、若いアヒルが完全に成鳥に達すると、形勢は逆転します。2つの世代の群れは、テリトリー争いをすることになります。
その結果勝った組の方がテリトリーを独占します。
自然界であれば、負け組は新たな場所にテリトリーを探すのでしょうが、人が飼っている以上、他の場所に出て行くこともできませんので、負け組は、その後は勝ち組の目を盗んで生活するようになります。
屋外の広い庭であれば、互いの組が顔を合わさずに過ごすこともできます。
しかし、小屋内飼育ですと、そうも行きません。勝ち組に餌も池も独り占めされてしまうことになりますので、負け組は生活が苦しくなります。
群れの中では、順番こそありますが、互いに譲り合って餌も水浴びも行儀良くこなしますが、群れの違うアヒル同士では譲り合うことがありませんので、仲良く共有することはできません。
この場合は、飼い主が意図的にテリトリーを区分して、それぞれ独立した生活をさせるしかなく、えさ場も池も共有はできません。
雌の1羽だけが交尾の対象に
成長して交尾が行われる時期になると、最も成長の良い雌1羽だけに雄が集中して交尾を行おうとします。
しかし実際には、群れのリーダーだけが交尾を行うことになります。リーダーは群れの中の雌を独占し、他の雄が交尾しようとしても追い払ってしまいます。
それで他の雄は、リーダーの目を盗んでしか交尾できなくなりますが、群れはほとんどの時間をともに過ごしますので、こうした幸運はあまり訪れないようです。
この時期群れを観察すると、1羽だけ頭の後ろの羽がむしれて、かわいそうな姿になっている雌がいます。それが交尾の対象になっている雌です。
交尾だけは、群れを超えることが
世代の違う群れ(もしくは世代の違う雄のアヒルが1羽)が存在する場合、世代が上の群れの雄は、若い群れの雌を交尾の対象にする事があります。
これが起こるのは、若い群れの雄が完全に成長しきるまでのわずかな期間です。
アヒルは雌の方が成長が早いため、雌が成熟した当初は、同じ世代の雄の成熟が足りません。
そこでこの時期だけは、世代が上の雄と交尾をする事があります。
世代の上の雄は、この時期には力も強いので、若いアヒルの雄も追い払ってしまいますので、雌は独り占めになります。また雌も、世代の上の成熟した雄の方を好むようです。
この状況は、若い世代の雄の成熟し、世代の形勢が逆転すると同時に終わりを告げます。