アヒルは、原則としてしつけを行うことができません。イヌやネコであれば、トイレや寝床をしつけて、一定の場所に定めることができますが、アヒルの場合はそれができません。
ただ、アヒルは生活が毎日一定のリズムによって行われている場合がほとんどですから、そうした習性に合わせて、アヒルの生活を抑制していくことはできます。
アヒルのしつけ方
トイレのしつけ
無理です。アヒルはところ構わず糞をし、羽をまき散らし、羽に塗る油飛ばします。
アヒルが歩いた後に、糞や油(白い液体)が飛び散っているのを見ることがあるでしょう。
従って、トイレに関しては人間がまめに掃除してやるしかありません。
現在小屋内飼育が原則ですから、小屋内の掃除は毎日行い、不潔にしないようにしましょう。
もしアヒルを屋外に出したとき、特定の場所を汚されたくないときには、柵などによってその場所にアヒルが入らないようにするしかありません。
また、アヒルは植物や苔などを好む性質があり、食べてしまうこともあります。
ナスやキュウリのような野菜の場合は、実がなる前の花を食べてしまうので、実がならなくなります。(もちろん実があれば、実も食べます)
これもいくらしつけても性質は直りませんので、植物の方を囲って、アヒルがそばに来ないようにするしかありません。
餌のしつけ
アヒルは一定の時間のリズムによって、毎日を過ごします。
従って、餌をやる時間を一定に保つ事はできます。飼い主が一定の時間に餌を持って行くようにすれば、アヒルは自然とその時間にえさ場に集まってきます。
小屋内飼育であっても、餌の時間に人が小屋内に入れば、アヒルは自然に寄ってくるでしょう。
拾い食いのしつけ
これも無理です。それでも、成鳥になると、何が食べられ、何が食べられないか区別できるようになりますし、食欲も中雛の時より落ちますから、食べ過ぎてしまったり、食べてはいけない物を食べてしまったりすることはぐっと減ります。
しかし、特に中雛の時期のアヒルは、何にでも関心を持ち、口に入れる習性があります。
石やガラス片など、食べてはいけない物でも、一度は口に入れようとします。また、食べていい物でも、際限なく食べてしまうので、食べ過ぎによる体調不良が心配です。
中雛までの雛は、決まった時間に決まった量の餌を与え、食べ終わったら速やかに片付けるという事をかかさず行う必要があります。
さらに、小屋内や、アヒルが通る道は、よく掃除して、異物を落とさないようにするしかありません。
また成鳥は、食べ残しを食べたりはしませんが、それでも食べ残しの餌の放置は、不潔になります。
小屋内飼育は特に限られた空間で飼育しますので、清潔を保つためにも、食べ残しは速やかに片付けましょう。
逃亡、脱走のおそれ
アヒルはテリトリーを作り、その中で生活する鳥です。小屋内飼育であれば、どのみち逃亡する恐れはないでしょうけれども、それでも初めてその小屋に入れるとき(もしくは飼育空間に出すとき)きちんと境界に柵をつくり、(もしくは、小屋の壁をきちんと囲って)ここまでがテリトリーであることがわかるようにします。
いったんそのテリトリーを覚えれば、後は、アヒルの目線から見て、風景が大きく変化しない限り、自然にそこから出て行くことはなくなります。
毎日、テリトリーの境界を歩き、確認して生活するようになります。
但し、アヒル目線での風景が大きく変化すると、テリトリーの境界がわからなくなるので、そこから出て行ってしまう可能性はあります。
小屋内飼育では、ドアを閉め忘れたりすると、そのような危険があります。
それでも短時間の閉め忘れなら、まず出ては行かないでしょう。そこにドアがあることを覚えていますので、見知らぬ外の風景を覗くことはあっても、怖がって出て行きません。
唯一問題があるのは、家の外に水場が見えたときです。台風などがあって、外に水が流れているのが見えたりすると、興味を持って出て行ってしまうことがあります。その点だけは注意が必要です。
喧嘩の仲裁
テリトリーがあり、群れで行動する性質のあるアヒルは、自分の群れ以外のアヒルとは仲良くなりません。
テリトリーの取り合いが起こり、けんかになりますし、テリトリーが決まった後は、自分のテリトリーに自分の群れ以外のアヒルが入ることを拒み、けんかになります。
これはしつけようがない行動ですので、人間の手で、2つのテリトリーをきちんと行き来できないように分けなければなりません。
アヒルは飛べないので、それほど高い柵はいらないでしょう。
人間の腰高くらいの柵で仕切ってやれば事足ります。
しかし、えさ場も池も共有はできません。仕切りなどをつけて、分けるしかありません。
人を見分けるしつけ
現在小屋内飼育をするアヒルでは、あまり必要に迫られませんが、アヒルは自分のテリトリーに他の生き物(人間を含みます)が入ることを警戒し、一歩でも入ると盛んに鳴いて威嚇します。
問題は、飼い主や家族が近づいたときで、そのたびに大きな声で鳴かれては近所迷惑なことです。
しかしよくしたもので、アヒルは人の顔を覚えます。それも飼い主やその家族は見分けるのです。
ですから、家の敷地内に飼い主やその家族が入ってきても鳴きません。
しかしその反面、それ以外の人が入ると、とたんに鳴き出します。これは毎日訪れる新聞配達でも同じで、決して慣れません。そのおかげで番犬としては非常に優秀です。
但し、彼らに一定距離以上に近づくと、それが飼い主であっても鳴き出します。
世話をするためでも、近づきすぎると盛んに鳴きます。ただ、餌をもらうときだけは、それが飼い主や家族であれば、おとなしくしている傾向があります。
そこで掃除などの世話は、餌やりの時に一緒にするという方法があります。こうすることでアヒルが鳴き出すのを最低限度に押さえることができるでしょう。